電子工作や電気工学の学習を始めようと参考書を開くと、高確率で最初の数ページから「抵抗(R)の法則」「コンデンサ(C)の静電容量」「コイル(L)のインダクタンス」といった、個別の部品の特性話が始まります。
正直なところ、そこで「これを使って結局何をするの?」と立ち止まってしまった経験はありませんか?
数式やグラフが並ぶ前に、本当に知りたいのは「回路全体の流れの中で、その部品がどんな役割を担っているのか」というストーリーのはずです。
今回は、バラバラになりがちな知識をひとつに繋げる、「電子回路の本質」について紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
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電子回路の目的
まず、電子回路とは一体何のために存在するのでしょうか。極論を言えば、目的はこれだけです。
電子回路とは、さまざまな電子部品を繋いで、自分が欲しい「出力(電圧・電流・信号)」を作り出す仕組みのこと。
例えば、マイクが拾った微弱な声をスピーカーから大きく出す、センサーが感知したわずかな温度変化をデジタルデータに変える、あるいは暗くなったらLEDを点灯させる。
これらはすべて、入力された「何か」を利用したい「形」へと変換するプロセスです。回路図に並ぶ無数の部品は、すべてこの「目的の出力」を達成するための役割を担っているのです。
「理想」と「現実」のギャップを埋める
ここで重要なのが、「部品は理想通りには動いてくれない」という事実です。
単純な回路、例えば電球を光らせたい場合は電池と電球を繋げば光ります。しかし、実際の電子回路では、ただ信号を通すだけでも以下のような問題が発生します。
- 電圧の低下
配線や部品を通るだけで、電圧が降下している。 - 電流不足
次の部品を動かしたいのに、そこまで流す力がない。 - 周波数の乱れ
信号が歪んだり、余計なノイズが混じったりする。
もし信号をそのまま放置して次の部品に渡してしまったら、エラーが起きたり、最悪の場合は部品が壊れたりしてしまいます。
そこで重要になるのが、「次の部品がその性能を 100% 発揮できるよう、受け取りやすい形に信号を整える」という作業です。この「橋渡し」の設計こそが、電子回路を安定して動かすための核心と言えます。
R/C/Lは信号を整える
ここで、R(抵抗)、C(コンデンサ)、L(コイル)の登場です。これらの部品は個別の特性を誇示するためにいるのではなく、「信号の調整役」を担っています。
多くの本が R / C / L から解説を始めるのは、これらの部品が信号を整えるための最も基本的かつ強力なツールだからです。
R(抵抗)は流れを制限し、電圧を分ける
抵抗は、電気の流れをあえて邪魔する部品です。

「なぜ邪魔をするのか?」と思うかもしれませんが、これによって「流しすぎ」を防ぎ、必要な分だけの電圧を取り出す(分圧)ことができます。水道の蛇口を絞って、水の勢いを調節するイメージです。
C(コンデンサ)は電圧の揺れを抑え、直流を遮る
コンデンサは、電気を一時的に蓄えるバッファのような存在です。

急な電圧の変化(ノイズ)を吸収して滑らかにしたり、真っ直ぐな電気(直流)をカットして、変化している成分(信号)だけを取り出したりします。
L(コイル)は電流の変化に抵抗し、ノイズを弾く
コイルは、電流の急激な変化を嫌う性質を持ちます。

この性質を利用して、高い周波数のノイズをブロックしたり、磁気の形でエネルギーを蓄えたりします。
これら3つの部品を組み合わせることで、「ノイズがない信号」を作り出すことができるのです。
弱った信号を「増幅」で蘇らせる
R / C / L で信号を整えても、一つだけ解決できない問題があります。
それは、調整を重ねるほどに信号のエネルギー自体は弱まっていくということです。
整えられた「綺麗な信号」であっても、それが消え入りそうなほど微弱であれば、スピーカーを鳴らすこともモーターを回すこともできません。そこで必要になるのが、トランジスタやオペアンプによる「増幅」です。
「増幅」の正体は、電源からのエネルギー供給
ここで勘違いしてはいけないのが、増幅器が魔法のように信号そのものを巨大化させているわけではない、という点です。
増幅とは、「元の弱い信号を使って、外部の『電源』から持ってきた大きなエネルギーをその形に成形して出力する」という作業です。
増幅のイメージ
- 入力された弱くて綺麗な信号が届く。
- 増幅器(トランジスタなど)が、その信号を読み取る。
- 電源(電池やコンセント)から大きな電力を引き出す。
- 元の信号と全く同じ形で、力強い信号として次の回路に渡す。
「信号が強くなった」と感じるその電力の正体は、実は信号そのものではなく、電源から供給されたエネルギーなのです。
まとめ
回路の中で部品がどのような役割を担っているのかを説明しました。
「今、自分は信号のどの部分を整えようとしているのか?」という視点を持つだけで、回路図の見え方は劇的に変わります。ぜひ、この視点をもって回路設計を実施してみてください。
- 入力
まず、不安定で微弱な信号が入ってくる。 - 調整(R/C/L)
部品たちが理想的に動けるよう、信号のノイズを削り、電圧を整える。 - 増幅(トランジスタ等)
綺麗になった信号をガイドにして、電源の力を借りて強い信号にする。 - 出力
十分な強さになった信号が、最終的な仕事(音、光、動作)をする。
以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。


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