【KiCad】プリント基板EDA「KiCad」を徹底解説

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プリント基板設計ソフト」と聞くと、

Altium Designer(アルティウム デザイナ)

EAGLE(イーグル)

というような高価なソフトを思い浮かべる人も多いかもしれません。

ですが、無料で使えるうえに高機能なEDA(Electronic Design Automation)ツールとして、近年エンジニアの間で急速に注目を集めているのが「KiCad」です。

今回は、「KiCadってそもそも何?」「どんなことができるの?」「他のEDAツールとの違いは?」といった疑問にお答えする形で、KiCadの特徴や使いどころを分かりやすく紹介していきます。

オススメの参考書

KiCad の基本操作から実用的な基板設計までを丁寧に解説した一冊です。多層基板や差動配線など高度な機能にも対応しており、付属の DVD で実践も可能です。初心者から中級者の方に最適な一冊です。

目次

KiCadとは?

KiCad(キキャド)とは、プリント基板の設計に使われるオープンソースのEDAツールです。

1992年にJean-Pierre Charras(ジャン-ピエール・シャラール)氏によって開発され、現在は多くの開発者によってメンテナンスされ、CERN(欧州原子核研究機構)も開発に参加しています。

現在の最新版はKiCad 9(2024年4月リリース)で、KiCad には次の機能があります。

KiCad の機能を紹介

  • 回路図エディタ(Eeschema)
    部品(シンボル)を配置し、ピンや端子を線で接続し、回路図を作成します。
  • 基板レイアウトエディタ(PCBnew)
    部品(フットプリント)を配置し、パターンを作成し、プリント基板を設計します。
  • 3Dビューワー
    設計した基板を立体的に表示します。
  • 部品ライブラリ管理ツール
    自作した部品(シンボルやフットプリント)や外部ライブラリを管理します。
  • BOM出力・ガーバーデータ生成
    基板の部品リストや製造業者への発注データを出力します。

無料で利用できるにも関わらず、充実した機能を持っているのが大きな魅力です。

KiCadでできること

KiCad は、回路図の作成から基板レイアウト、さらには 3D 表示による完成イメージの確認まで、プリント基板設計に必要な一連の作業を網羅的にサポートしています。

KiCad で実際に何ができるのかを具体的に説明します。

回路図の作成

KiCad では、回路図エディタ(Eeschema)を使って直感的に回路図を作成できます。

抵抗やコンデンサといった基本部品から、IC、コネクタ、カスタム部品まで幅広く取り扱えます。

階層的な設計や、設計ルールのチェック(ERC)にも対応しています。

また、部品の回路図シンボルとフットプリント(実装形状)を紐づける設定もここで行い、基板設計へスムーズに移行できる仕組みが整っています。

基板レイアウト設計

基板レイアウトエディタ(PCBnew)では、回路図からネットリストを生成し、実際の基板に部品を配置し配線します。

ネットリストの読み込みによって、回路図上で定義された接続関係が自動的に反映されます。ユーザーはそれに従って部品配置と配線(ルーティング)を行います。

差動信号や高周波対応のインピーダンス制御配線、ビア(スルーホール)設計など、専門的な技術にも柔軟に対応しています。

3D表示で仕上がりチェック

レイアウトが完成したら、KiCad では設計した基板を 3D でリアルに確認することができます。これが可能なのは、各部品に対応した 3D モデルが用意されているためです。

3D ビューアを使うことで、基板の表面・裏面の状態や部品の高さ関係、筐体との干渉の有無まで確認でき、見た目のチェックやメカ設計とのすり合わせにも活用されます。

完成イメージを事前に関係者と共有することで、製造前のミスを未然に防ぐことができるという点でも、非常に実用的な機能です。

部品表(BOM)や製造データの出力

KiCad は設計だけでなく、製造・発注に必要な各種データの出力機能も充実しています。

回路図や基板上の情報から、BOM(Bill Of Materials)を自動生成できるため、部品の調達や見積もり作業をスムーズに進められます。

また、製造用にはGerberファイルやドリルデータの出力機能も完備しており、基板製造業者にそのまま送れるレベルのデータを作成できます。BOM編集にはGUIベースのエディタもあり、Excel感覚で部品名や数量を編集できるのも魅力です。

メリットとデメリット

KiCad は無料で本格的なプリント基板設計が行えるので、多くのエンジニアから支持されています。

特にコストを抑えたい個人開発者や小規模プロジェクトでは、重宝される EDA ツールであることは間違いないでしょう。

とはいえ、完璧なツールというわけではなく、メリットとデメリットもあります。

メリット

  • 無料で利用可能でライセンスは不要(商用利用もOK)
  • Windows / macOS / Linux など様々なOSに対応
  • 複数層(最大32層)の多層基板に対応
  • Pythonでの自動処理やカスタマイズが可能

デメリット

  • 商用EDAツールのような高度な自動配線は実装されていない
  • ライブラリのメンテナンスはやや手動的で不便な場合がある
  • サポート窓口は存在しないため、GitHubやコミュニティを活用して解決する必要がある

KiCadと他のEDAツールの違い

EDA ツールは数多く存在しますが、KiCad と他の EDA ツールを比較した表が以下です。

スクロールできます
KiCadEAGLEAltium
価格無料無料〜有料高価 (数十万円〜)
商用利用無料版はNG
機能の拡張性
学習コスト中〜やや高
多層対応○ (最大32層) △ (制限あり)
公式サイト公式サイト公式サイト

KiCad は「無料で始めたい」「独自のライブラリやスクリプトを作りたい」ユーザーに特に向いています。

まとめ

KiCad は、無料で商用利用も可能なプリント基板設計ツールです。

回路図の作成から基板のレイアウト、3Dビジュアルの確認、部品リストや製造データの出力まで、プリント基板を設計するにあたって必要な機能をサポートしています。

  • 回路図エディタ(Eeschema)
  • 基板レイアウトエディタ(PCBnew)
  • 3Dビューワー
  • 部品ライブラリ管理ツール
  • BOM出力・ガーバーデータ生成

これから、プリント基板を設計してみたい方や有料ツールのコストに悩んでいる個人開発の方は、お使いの PC に KiCad をインストールしてプリント基板を設計してみてください。

インストール方法は以下の記事で紹介しています。

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。

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